【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
「レオノア様はきっとお寂しいのだと思います」
「・・・・・・・・・・・・」
「今日も、大きくなったら何になりたいのでしょうかとお聞きしたら・・・」
“お姫様になりたい!”
王子と姫の人形を抱きしめ、無邪気にそう答えたレオノア。
「王女様は、ご自分の身分を理解していないのです。それは、外の世界を知らないから無理もありません」
「レオノアが・・・そんなことを言っていたのか」
「叔父君から頂いたあのお人形も、それは大事になさっていて・・・自分がお姫様になれば、きっと“王子様”とも一緒になれると思っていらっしゃるのでしょう」
「・・・・・・・・・・・・」
リヴァイは手元のレモンケーキに視線を落とした。
このままでは、レオノアは自分が何であるかを忘れ、孤独になってしまう。
孤独なのは・・・自分だけでいい。
「キルシュタイン夫人・・・」
フォークを置き、自分とレオノアを育ててくれた乳母を見つめる。
「お願いがある」
「まあ、珍しい。何でしょうか?」
心を許せる夫人だから頼むことができる。
リヴァイは小さく頭を下げた。
「どうか、レオノアに────」
そのあまりにも優しい王子の願いを聞いた瞬間、キルシュタイン夫人の両目に涙が溢れた。
「これが、僕からの誕生日プレゼントだよ・・・」
自分が願うのは、レオノアの笑顔。
ただ、それだけだから・・・
リヴァイはカーテンの合間から望むことができる、白く輝く月を静かに見上げた。