【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
王に手袋を貰ったその日から、リヴァイはずいぶんと変わった。
それまでは王と王妃以外の人間を部屋に入れることを酷く嫌がったが、最近は一部の召使が足を踏み入れても何も言わないようになった。
ただ、相変わらずレオノアとは一切の接触を避けていた。
「今日はこちらもありますが、どうなさいます?」
夕食後、食器を下げ終えたキルシュタイン夫人は、紅茶と一緒にレモンケーキをテーブルの上に置いた。
甘いものを好まないリヴァイが、食後のデザートを食べることは滅多にない。
いつものように部屋で一人、夕食を取っていたリヴァイは、テーブルの上に置かれた生クリームたっぷりのケーキをチラリと見た。
「・・・これは食べる」
珍しくそう言った王子に、キルシュタイン夫人は笑顔を浮かべる。
「今日はレオノア様のお誕生日ですからね」
レモンケーキはレオノアの好物だ。
これは、ダイニングルームでの夕食後、ささやかな誕生日祝いをした時に出したもの。
レオノアが吹き消したロウソクも1本たっている。
「レオノアは・・・どんな誕生日プレゼントをもらってた?」
リヴァイは、銀製のフォークで少しずつ掬いながら、ケーキを口に運んだ。
自転車が欲しい、と言っていたっけ。
そんなことを思い出しながら。
「それはたくさんの贈り物に囲まれていましたよ。でも・・・」
「でも?」
「・・・・・・・・・」
言葉に詰まるように口をつぐんだ乳母を、静かな三白眼が見上げた。
たくさんのプレゼントに囲まれていたレオノア。
しかし、本当に欲しいものはそこになかった。
“リヴァイと一緒にケーキを食べたかったなぁ”
大量のプレゼントも、兄の存在には劣る。
だが、レオノアが寂しそうな顔をしていたことは、告げない方がいいだろう。
この部屋で孤独に耐えているリヴァイにとって、それは残酷すぎる。
キルシュタイン夫人は、ジッと自分の顔を見つめているリヴァイに微笑んだ。