【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
「ユミルの血が覚醒した・・・我々は・・・アレンデールは、この子の力に頼る他にない」
その言葉は、すでに予想していたものだったのだろう。
王妃はアレンデール王の頬を両手で包むと、愛する夫の額に自分のそれを合わせる。
「リヴァイはとても優しい子です・・・そして、強い子です。我が王、貴方に似て・・・」
この百年、アレンデール王家に氷の魔法を持った子どもは現れなかった。
だが、リヴァイが生まれたその日、王家の人間は思い出した。
かつて強大な力に支配されていた恐怖を。
鳥籠の中に囚われていた屈辱を。
「私は何ひとつ、後悔しておりません・・・」
海を渡った向こうの国から妃が嫁いできた日。
戴冠式の直前、王は妻となる女性にこの国の成り立ちを明かした。
そして、この王家には代々、ある“運命”を背負った子供が生まれてくるということも。
ある賢者は、それを呪いだという。
また、ある賢者は、それを神からの授かり物だという。
「もし・・・リヴァイに待ち受けているものが悲劇でしかないのなら・・・」
王妃の瞳からも、透明な涙が零れ落ちた。
「私達もこの子とともに落ちましょう。アレンデール国のために・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「私は貴方に嫁いだその日から、心臓をこの国に捧げております」
王に寄り添う、美しく心優しい王妃。
二人の想いを知らぬまま、リヴァイは王の背中で、レオノアはベッドの中で深い眠りについていた。