【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
アレンデール王とリヴァイが城に戻る頃には、すでに東の空が白み始めていた。
馬車の中で眠りに落ちてしまった息子を背負いながら、王は悲痛に満ちた顔で廊下を歩いていた。
御者からの“王子は私がお連れします”との申し出を断ったのは、少しでも長く我が子に触れていたかったから。
背中に感じる重み。
首裏に感じる微かな寝息。
寝ている姿だけなら、他の少年と何も変わらない。
いや・・・起きていても変わらない。
王にとっては、だが。
本人も普通の子どもと同じようにしていたいだろう。
王家に生まれたがために、城下町の子どものように自由に走り回り、悪さをし、親に甘えることができない。
「リヴァイ・・・」
もう少し成長したら、背負うことも難しくなる。
体が大きくなるということもあるが、何よりも魔法の力が他人と触れ合うことを許さなくなる。
それを思えばこそ、王は息子を背負って歩きながら、残りわずかな息子とのひと時を噛みしめていた。
暗い廊下を歩いていると、リヴァイの部屋へと上がる螺旋階段で、寝間着にガウンを羽織った王妃が佇んでいた。
「お帰りなさいませ」
王妃は、沈痛な面持ちでいる王の顔を見て、全てを悟ったのだろう。
背中で眠るリヴァイの頬を撫で、唇を震わせた。
「レオノアが・・・怖くて眠れないと、一晩中泣いておりました」
「あの子が・・・」
母親の腕に抱かれていても、“怖い、怖い”と言って泣き続けた王女。
どんなに理由を聞いても答えず、先ほどようやく眠ってくれた。
「きっと・・・私達が何も言わなくても、リヴァイがいないことを感じ取ったのでしょう」
「・・・・・・・・・・・・」
「そして、私達がこの子の力を消そうとしたことも・・・」
「だが、それはできなかった・・・」
心の堰が切れたのか、妻の前で初めて王は涙を零した。