【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
結局、アレンデール王は当初の目的を果たさぬまま、城へ戻っていった。
馬車を見送ったハンジは、ドアを閉めながら、疲れたようにソファーに座るフリーダを振り返った。
「本当にこれで良かったの?」
口調は軽いが、目は真剣。
王とフリーダの会話に一切割り込むことはしなかったが、心穏やかに眺めていたわけではない。
「あの子の力は、いつかエレンを殺すよ。エレンだけじゃない、他の──」
「ハンジさん」
フリーダはハンジの言葉を遮り、憔悴した瞳を向けた。
「私には・・・できないよ」
「フリーダ・・・」
この部屋には数えきれないほどの書物がある。
しかし、象形文字で書かれたこれらの本を読むことができる人間は限られている。
ハンジのように研究者として文字を学んだ者か、
レイス家とアレンデール王家の“血筋”の者。
フリーダはノロノロと立ち上がると、この家の二階に続く階段に向かった。
ハンジも黙ってそれに続く。
古い階段は、一歩踏むごとにギシリと音を立てる。
部屋で寝ている者を起こさないよう、二人ともソロリソロリと上った。
そして、左右に一室ずつある二階の、片方のドアをそっと開ける。
質素なテーブルと椅子、タンスが一つ、そして氷を砕く道具が並べられた部屋。
床には昨日履いていた靴下が落ちている。
そして、白い月明かりがベッドを照らしていた。
「エレン・・・」
フリーダは寝息を立てている少年を見つめ、彼の名を口にする。
「ごめんなさい・・・私は貴方を守らなければいけないのに・・・」
ああ、なんて可愛らしい、無邪気な寝顔。
でも、貴方の中には激しい憎悪が眠っている。
アレンデールに対するその感情が目を覚ましたら、貴方は自己を失い、化け物と化してしまうだろう。
愛を知らず、孤独と憎しみに囚われたユミルの化身に・・・