【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
「魔法の力は王子を選び、彼に宿りました。最も相応しい時に、最も相応しい人物として」
それを、宿命と呼ぶ。
たとえ辛く、悲劇しか生み出さないものだとしても。
フリーダはアレンデール王を見据え、その大きな瞳を揺らした。
この部屋の全ての壁には天井まで届こうかという本棚が並べられている。
一つ一つの段にぎっちりと詰め込まれている書物のほとんどに、リヴァイの読めない古代象形文字が刻まれていた。
それが今、やけにリヴァイの視界に入る。
あの文字は・・・いったい何を意味しているのだろうか。
「アレンデール王。貴方は、ただ“饒舌”だというだけでその者の舌を切り取るのでしょうか?」
フリーダの美しい顔からは、一切の感情を読み取ることができない。
「貴方は、ただ“目敏い”というだけでその者の眼球を抉るのでしょうか?」
持って生まれたものを、“特別”と捉えるか、“害悪”と捉えるか。
今、フリーダはアレンデール王に問いかけていた。
「貴方はアレンデールの全てを知っている。ならば、“何故”魔法の力が、“今”王子に宿っているのか・・・それもご存じのはず」
王の顔に苦悩の色が浮かぶ。
リヴァイは心配そうに父を見上げた。
ここへ来る途中の馬車・・・いや、昼間、“ハンジの所へ行こう”と言い出した時から、王の心には決意と迷いが入り乱れていることに、リヴァイは気づいていた。
父上は、葛藤している。
「・・・・・・・・・・・・・・」
この魔法の力を消すことは可能だという。
その術をフリーダは知っているという。
だが、アレンデール王は最後の決断を下せずにいた。
「父上・・・」
不安そうに父を見るリヴァイ。
その場で成り行きを見守っていたハンジが、幼い王子に憐れむような瞳を向けた。
そして、フリーダの次の言葉が、全てを決する。