【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
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人目をはばかりながら、夜の森を走る馬車。
王家の人間が乗っていることを山賊に悟られないよう、主座席が一列しかない質素な造りをしていた。
「大丈夫か、リヴァイ」
車輪が石を踏むたびに車体が大きく跳ねると、小柄な王子の体も飛び上がる。
父は隣で不安そうな顔をしている息子を抱き寄せ、小さな窓から漆黒の世界を見つめた。
一年前、ここを駆け抜けた時は、ただただ必死だった。
リヴァイの持つ魔法の力が、レオノアの命を奪おうとしている。
それだけは阻止せねばならぬと、自身も我が子の力で凍傷を負いながら、ひたすらに手綱を握っていた。
ガラガラガラと響く馬車の音。
夜も更け、さすがに睡魔が襲ってきたのだろう。
父に体を預けるリヴァイは、今にも瞼が落ちそうだ。
ハンジに連絡はしていないが、おそらくもう自分達が向かっていることに気づいているはず。
アレンデール王の脳裏に、リヴァイと同じ黒髪をなびかせるレイス家の末裔が浮かんだ。
「フリーダ・・・」
彼女・・・いや、レイス家の人間と顔を合わせたのは、“あの時”が初めてだ。
できることなら関わらずにいたかった。
しかし、リヴァイがこの世に誕生した瞬間から、その運命にあったのだ。
美しいアレンデールは、悲しき怪物の呪いによって生まれた国。
この地を治める王家と、レイス家は決して相容れることはない。
王は目を閉じているリヴァイを見つめた。
「彼らにとって、我々は罪深き血。だが・・・」
ふっくらと白いリヴァイの頬を撫でる。
「お前も・・・レオノアも・・・何も悪くはない。誰に恨まれようとも、私にとっては命よりも大切な天使だ」
願うはただ、二人の幸福。
そして、アレンデールの民の安穏。
王は唇を噛みしめ、再び視線を暗闇に戻した。