【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
トントントントン
部屋の隅で蹲っていたリヴァイは、顔を上げた。
これは、レオノアが叩く音ではない。
「リヴァイ、大丈夫か?!」
父の声に、リヴァイは泣きそうな感覚を覚えた。
先ほどの誰かを呼ぶ声に気が付いてくれたというのか。
そこまで大きな声を出していなかったというのに・・・
ノロノロと立ち上がり、ドアを開ける。
僅かにノブが凍ったが、父の方には影響が無かったようだ。
中に入ってきた王は、リヴァイの顔を見るや、憐れむようにその体を抱きしめた。
「リヴァイ、大丈夫か? 誰かを呼んでいたようだが」
「うん、大丈夫・・・それより、レオノアは?」
「レオノア?」
「さっき、中庭でケガをしてた。バラの刺が腕を引っ掻いたみたいだ」
父王はリヴァイを抱きながら、窓の方に目を向けた。
そこにはまだ、解けきっていない氷が残っている。
封じ込めていたはずの魔法の力が暴走したことは明らかだった。
「そうだったのか・・・教えてくれてありがとう、リヴァイ」
「キルシュタイン夫人が手当をしてくれるみたいだから、大丈夫だと思う」
「そうか・・・私もあとでレオノアの様子を見に行こう」
「うん・・・父上の顔を見たら、きっとレオノアも安心する・・・」
本当ならば、自分もすぐに妹の所へ飛んでいきたいのだろう。
しかし、王子は口を真一文字に結び、拳を震わせている。
このままではいつか抑えきれなくなる。
妹を心配する優しい心すらも引き金として、その攻撃性の片りんを見せた力。
やはり、抹消すべきだ。
少しでも弱いうちにリヴァイの中からこの力を消さなければ、愛する二人の我が子に悲劇が襲うだろう。
アレンデール王は覚悟を決めた。