【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第3章 In Summer
リヴァイが軟禁状態となってから、季節が一周した。
しかし、魔法の力は封じ込められるどころか、その強さを増すばかり。
ある日、いつものようにローズガーデンを走り回るレオノアを、リヴァイが本を読みながら眺めていた時のことだった。
偶然、一束のバラが王女の腕を引っ掻いた。
鋭い刺が柔らかな皮膚を裂き、みるみるうちにドレスの袖が血で染まっていく。
「痛い!!」
その声にリヴァイは思わず窓に手をついてしまった。
その瞬間、パキパキという音をたてながら窓枠が白く凍り付いていく。
「・・・!」
止めなければ!
そう思ってもリヴァイにはどうすることもできず、みるみるうちに波紋のように氷が広がっていった。
その一方で、レオノアはケガをして、泣いている。
その光景がリヴァイの心を乱し、攻撃性を秘めた力が抑圧から解放されたとばかりに放出されていく。
どうしようもできなかった。
数秒もしないうちに窓は完全に氷と化し、ローズガーデンを見ることができなくなるまでになる。
「誰か・・・! 誰か来て・・・!!」
いや、来ないで欲しい。
このままでは誰かを傷つけてしまう。
リヴァイは両手を胸の前で合わせ、縮こまるようにして部屋の片隅に座り込んだ。
何も触れてはいけない、何も見てはいけない。
そう自分に言い聞かせているのに、どうして部屋は凍り付いていくのだろう。
「レオノア様! 大丈夫ですか?」
「乳母やぁ」
僅かに開いたドアの隙間から、キルシュタイン夫人の声が聞こえた。
きっと、レオノアの泣き声を聞いて駆け付けたのだろう。
「大丈夫ですよ、ちょっと切り傷が出来ただけです」
「痛いよう」
「ほーら、もう血が止まりました。でも、消毒をしましょうね」
良かった・・・
そこまで大きなケガではなさそうだ。
安堵した瞬間、魔法の力がその勢いを止める。
リヴァイは恐怖に怯えながら、床から窓にかけて自分の力の痕跡を確認する。
幸い、氷は薄く、解けるまでに時間はかからなそうだ。
でも・・・
今よりももっと強い力が出てしまったら・・・?
この城全体を氷で覆いつくしてしまうかもしれない。
・・・怖い・・・!
再び恐怖が王子に襲い掛かろうとした瞬間、部屋のドアをノックする音が聞こえた。