【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第2章 Do You Wanna Build a Snowman?
フィヨルドの岩盤の上に築かれた、アレンデール城。
この地方独特の建築様式を用いた、風格がある石造りの外観。
城下町から眺めることのできる張り出し窓には全て、レリーフが飾られている。
高くて鋭く、傾斜が急な屋根は、厳しい寒風や積雪にいくらでも抵抗できるだろう。
この力強く、美しい城は国民の誇りだった。
城内もまた、優美で精密な装飾が施され、訪れる者は感嘆の息を漏らした。
しかし、今やその門も固く閉ざされている。
全ての窓が閉めきられ、昼間でもカーテンは開くことがない。
召使も必要最小限の人数に減らされ、城はかつての華やかさを失った。
それでも、王家の紋章が織り込まれた壁紙で彩られた廊下に、明るい声が響く。
「リヴァイ!」
アレンデール城で、ただ一人。
レオノアだけは、この城の“かつての姿”を知らなかった。
否。
この城は昔から太陽の光が差し込むことのない、寂しい場所。
そのように記憶を塗り替えられていた。
だからこそ、王女は要塞のように様変わりしたこの城で、笑顔を絶やさずにいることができた。
「リヴァイ!」
城の一番奥にある部屋。
そこに大好きな兄がいる。
外は雪がちらついている。
凍えるほど気温は低いはずなのに、レオノアは薄着でも寒さを感じなかった。
この雪なら、ずっと部屋に閉じこもっているリヴァイも姿を現すはず。
そう信じて、エンジ色の絨毯が敷かれた廊下を走る。
真っ白な戸板に、青い雪の結晶を模した柄が描かれたドア。
息を弾ませながらその前に来ると、小さな手で拳を作った。
トントトトントン
リズミカルな音が、廊下に響く。