【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
「良かった・・・」
フリーダは静かに微笑むと、王に明るい目を向けた。
「魔法が当たったのが頭で良かった・・・心を変えるのは難しいことですが、頭なら簡単に“丸め込む”ことができます」
とはいえ、危険な状態であることに間違いはない。
レオノアの意識はなく、魔法が当たった部分の髪は白く脱色されてしまっている。
これほど強い魔法を、いったいどのようにして丸め込むのか。
リヴァイは父の服の裾を掴みながら、不安げにフリーダを見つめていた。
それは王も同じだったのだろう。
「どのようにしてレオノアを救うのか?」
そう尋ねると、フリーダは黙ったままレオノアの額に自身のそれをぴったりと付けた。
その瞬間、ピリッと何かが裂けたような音が響く。
「魔法を全て消し去るのです。念のため、王女の頭の中にある魔法に関する記憶も」
真夏に輝く、雪の結晶。
雪だるまのオラフ。
ふわふわの真っ白な滑り台。
大好きな兄に見せてもらった、数々の奇跡。
「心配はいりません・・・楽しかった思い出はそのままに」
今、フリーダの脳裏には、レオノアの中にあるリヴァイとの記憶が映っていた。
王家という特殊な環境に生まれ、特殊な能力を持つ宿命を背負ってしまった兄。
そんな兄を慕い、寄り添い、無邪気にはしゃぐ妹。
この幼い王女がどれだけ兄を、両親を愛しているか。
記憶を断片的に覗くだけで温かい気持ちになる。
「・・・・・・レオノア・・・!」
次第に頰に赤みが戻っていくレオノアに、母が安堵の声を漏らした。
それまで苦しそうにしていた表情も和らぎ、口元には微かに笑みが浮かんでいる。
記憶を塗り替え終えたフリーダは、そっとレオノアから顔を離すと微笑んだ。