【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
それは、初夏のある夜のこと。
真っ白なお城の窓から、小さな顔がのぞいていた。
夜空を見上げ、月明かりに照らされている。
大きなふたつの瞳が白み始めた空を見ると、嬉しそうに輝いた。
「リヴァイ!」
彼女なりに小さく抑えようとしているのだろう。
しかし、嬉しい気持ちが先走り、部屋中に弾けるような声が響いた。
年齢は、6歳。
真っ白なネグリジェを翻しながら、反対側の壁に置いてあるベッドに飛び乗る。
「リヴァイ、起きて!」
そこには、少女と3つ離れた兄が眠っていた。
まだ夢の中にいるのか、ふっくらとした瞼はしっかりと閉じられたまま。
「起きてよ、リヴァイ!」
「・・・まだ寝てろ、レオノア・・・」
目を開けずとも、まだ朝まで大分あることくらい分かる。
心地よい眠りを邪魔されたくないのか、毛布を耳の位置まで引き上げて頭をその中に埋めた。
「ねぇ、遊ぼうよ。お人形さんごっこしよう」
「・・・・・・・・・・・・」
昨晩は延々とそればかりしていたのに、まだ飽きないのか。
海の向こうの国を治める叔父からプレゼントされたという人形。
特別に作らせたのか、レオノアによく似ていた。
そしてもう1体、リヴァイに似せて作られた人形もあった。
レオノアはその2体を“お姫様”、“王子様”と呼び、何年か前に参列した隣国の王子の結婚式を再現するのが好きだった。
「ねぇ、リヴァイ」
もう8歳のリヴァイにとって、妹の人形遊びになど付き合いたくはない。
どうせ“王子様”を持たせられて、デタラメな愛の誓いをさせられるのだ。
しかも、同じシーンを何度も、何度も。
そして最後は、ダンスパーティーで終わる。
正直、うんざりしていた。
「・・・お人形さんごっこは、朝になったら付き合ってやる」
しかし、適当に相づちを打つ程度でも、この可愛い妹は溢れんばかりの笑顔を見せる。
無邪気にも、お人形さんのように自分と結婚したいと言ってくれる。
気がつけばそんなレオノアに言われるがまま、リヴァイは自分にそっくりな人形を動かしていた。