【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
厳しい寒さが生み出す、美しき渓谷フィヨルド。
険しい岩肌を見せる壮大な山々と、優しく静かに揺れる海。
アレンデール王国。
海を渡る船乗り達はまず、その色彩豊かな港町に言葉を失う。
冬が長く、大地に緑が広がる季節は短いこの国の建物は、壁を鮮やかな色で塗るのが伝統となっている。
海から見ると、まるでそれは色とりどりの刺繍のように、細長く複雑な形をした湾を彩っていた。
そして、圧巻なのはフィヨルドの海岸線のすぐそばまで聳え立つ山。
どれほどの高さなのだろう、山頂は万年雪で白く輝いている。
アレンデールの民は、この国を愛していた。
王国の背に聳える険しい雪山に入り、氷を削ってくる山男達。
海を渡ってやってくる旅人や商人を温かく歓迎する、港の女達。
けっして強国でも、大国でもない。
それでもこの国は笑顔に溢れ、活気に満ちていた。
そんな幸せな国だが、ある“秘密”があった。
聡明で正義感に溢れた国王。
美しく心優しい王妃。
彼らは国民を心から愛し、全てを分かち合い、分け与えるつもりだった。
しかし、たった一つだけ・・・秘密にしていることがある。
それは、この王家には代々、ある“運命”を背負った子供が生まれてくるということ。
ある賢者は、それを呪いだという。
また、ある賢者は、それを神からの授かり物だという。
そのどちらなのかは誰にも分からない。
ただ・・・
その子に待ち受けているのは、悲劇のみ。
それだけは確かなことだった。
王妃は、生まれてきた我が子にその運命が宿っていることを知った瞬間に涙した。
国王は、我が子を命の限り守ることを誓った。
もしこの子を失ったら、フィヨルドに囲まれた美しいアレンデールが氷で覆われるよりも冷たく、深い悲しみに包まれるだろう。
だから、国王は・・・
我が子が運命を背負って生まれてきたことを、ひた隠しに隠した。