【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
ようやく辺りが白み始めている早朝。
訪ねるには非常識な時間であることは間違いない。
しかし、父は躊躇なく古ぼけたドアをノックした。
国王という権力を振りかざしているわけでも、
この家の主が親しい友人であるというわけでもない。
ただ藁にもすがる思いで、家人の迷惑など考える余裕がない、といったところだろう。
リヴァイはそんな父から半歩下がったところで、中からどのような大男が出てくるのかと、不安な気持ちになりながらドアを見つめた。
こんな時間にドアを叩かれたのだ。
きっとこの家の主は警戒心から、そっとドアを開けるのだろう・・・と思ったが大間違い。
バンッ!!と勢いよくそれは開き、中から出てきたのは痩躯の人間だった。
ボサボサの茶髪をひとつに纏め、シワとシミだらけの寝間着姿。
しかし、数時間前から起きていたのか、寝ぼけた様子はまったくなかった。
この人は男なのだろうか、それとも女なのだろうか。
それよりも、若そうにも見えるし、30歳を超えているようにも見える。
城の中にいる人間とはあまりにかけ離れた風貌に、リヴァイは戸惑いを隠せなかった。
「これはこれは、アレンデール王」
「夜分・・・というか、明け方に失礼する」
仰々しく頭を下げるその人物に、父も軽く会釈した。
「ハンジ・ゾエ。お前の力を借りたい」
この汚い風貌の人間に、レオノアを救う力があるというのか。
ハンジと呼ばれたその人物は、ちらりとリヴァイに目を向けた。
ヘラヘラした表情とは違い、その瞳はまるで鷹のように鋭く、そして思慮深い。
何故か心の中まで見透かされてしまいそうで、一歩後ずさった。
「君がここに来ることは随分前から知っていたよ、リヴァイ王子」
「・・・・・・・・・・・・」
「そう。君が生まれた、その時からね」
リヴァイはその言葉の意味が分からず、小さな首を傾げた。
瀕死のレオノアを救ってもらうためにここへ来たのではないのか。
何故、この人間は自分ばかりを見ている?
居心地の悪さを覚え、目を逸らすようにして小屋の中を見渡した。