【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
「・・・痛ッ・・・」
あの日の事を思い出そうとすると、いつも酷い頭痛が襲う。
まるで“思い出すな”と、脳が拒否しているようだ。
「エレン、もう着く」
ミカサの声で顔を上げると、数十メートル先に小屋の灯りが見えた。
父が姿を消した、その日。
エレンとミカサの目の前に現れ、二人を引き取った“恩人”。
世間からは、変わり者、魔術師などと呼ばれている人物の家があった。
「見て、王達の馬が繋がれている」
「こんな時間になんの用だっていうんだ。まさか、ハンジさんを連れていくつもりじゃ・・・」
「女の子が死にかけてた。きっとそれが理由」
「でも、ハンジさんは医者でもなんでもねぇぞ」
夜明けとはいえ、木々に覆われたこの辺りはまだ太陽の光が届くまでに随分と時間がある。
エレンとミカサはソリから降り、そっと窓の外から小屋の中を覗き込んだ。
先ほどの王と妃の姿が見える。
そして、応対している寝巻き姿のハンジ。
「・・・オレ達も行こう」
エレンがそう言って小屋に入ろうとした時だった。
突然、腕を強く引っ張られる。
「中に入ってはダメ!」
「痛っ!」
暗闇で気づかなかったが、いつの間にか二人の背後には一人の女性が立っていた。
「フリーダ・・・?」
「驚かせてごめん」
長い黒髪に大きな瞳が美しいその人は、ハンジの友人フリーダ・レイス。
詳しくは知らないが、時々小屋にやってきては掃除をしたり、エレン達の面倒を見てくれる快活な人だった。
しかし、今は綺麗な顔を曇らせ、窓の向こうに見えている王達の姿を複雑そうに見つめている。