【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
どのくらい、その場で硬直していただろう。
アレンデール王一家が通り過ぎ、彼らの姿が見えなくなった瞬間、ミカサが口を開いた。
「エレン」
「・・・あ」
その声に、ようやく我に返ったエレン。
いまだ焦点の合わない目で、ボンヤリと王達が走り去っていった方角を見つめていた。
恐怖しているのか、それとも興奮しているのか。
細身の体が、僅かに震えていた。
「大丈夫?」
「ああ・・・何でもない」
“ 怖い ”
あの、三白眼を見た瞬間、直感した。
あの黒髪の少年に関わってはいけない。
「エレン、泣いてるの?」
「・・・!!」
大きな瞳から頰をつたう、一粒の涙。
心配そうなミカサに顔を覗き込まれ、エレンは慌てて服の袖で顔を拭った。
何故、泣いているのか自分でも分からなかった。
しかし、無意識の中に潜んでいた“記憶”が、あの王子によって刺激されたようだ。
理由はない。
ただ悲しくて、孤独を感じていた。
「泣かないで」
そう言って、おずおずと涙を拭ってくれる家族が隣にいる。
バカだな。
自分は一人じゃないのに。
「・・・泣いてなんかねぇよ。ただ、砂埃が目に入っただけだ」
「そう・・・ならいいけど」
心配をかけてしまったことに多少の気まずさを感じていると、ミカサが顔を曇らせながらエレンの手を引いた。
「行こう、エレン。“あの人”達が向かう先には、私達の家しかない」
「こんな時間にハンジさんに用でもあるのか? 王様と知り合いだなんて知らなかった」
「・・・友達というわけではなさそう。ハンジさんが心配」
確かにミカサの言う通りだ。
ハンジは世捨て人同然で、王族に関わりがあるとは到底思えない。
それに、護衛もつけずに血相を変えて馬を走らせていた様子から、ただ事ではないことくらい子供でも容易に想像がつく。
エレンとミカサは積んでいた氷を道端に捨ててソリを軽くし、家路を急いだ。