【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
「・・・なんだ?」
アイスマン以外に、こんな時間に出歩く人間などいない。
しかも、何か様子が変だ。
「・・・馬が二頭・・・でも、人間は四人・・・」
ミカサが眉を潜めながら後ろに広がる暗闇を見つめた。
その目には恐らく、エレンよりもはっきりと状況が映っているのだろう。
ソリから飛び降りると、トナカイとエレンを道脇の茂みに引っ張った。
「山賊かもしれない。隠れて!」
「こんなところにかよ?!」
小さな茂みだが子供の体を隠すには充分。
息を潜めながら、次第に大きくなってくる蹄音の方角に目を向ける。
すると、だんだんと辺りの空気が冷たく冷え始めた。
いくら夜明け頃の気温が一番寒くなる時間とはいえ、この冷え方は異常だ。
「寒い・・・」
見れば、地面に薄っすらと残っていた雪が硬く凍りつき始めている。
寒さと一緒に、得体の知れない恐怖が押し寄せてきた。
「ミカサ・・・これは一体・・・」
「シッ! 来た」
エレンが顔を上げた瞬間、二頭の馬が姿を現す。
それは山賊などではなかった。
見たこともないほどの豪華な装飾をつけた、王族の馬。
跨るのは、精悍な顔を曇らせたアレンデール王。
そして、美しい顔を今にも泣きそうなほど歪めている妃だった。
彼らには、エレンとミカサの存在に気づいた様子はない。
一刻も早くたどり着かねばならない場所があるのか、前方一点だけを見つめている。
しかし、エレンの心を奪ったのは、気高いその二人ではなかった。