【リヴァイ】 Frozen 〜 Let It Go 〜
第1章 Vuelie 〜語り継がれる愛〜
王が向かっていたのは、城の一番奥にある部屋だった。
普段は鍵がかけられており、王以外の人間は近寄ることすら禁じられている場所。
もちろん、リヴァイもその中に入るのは初めてのことだった。
「ここで待っていなさい」
王は不安そうにしている息子を部屋の隅に立たせ、自身は天井まで届こうかという本棚へと駆け寄る。
分厚い古書が何百冊もあり、羊皮紙に描かれた地図や、リヴァイは見たこともないような文字が並んでいる紙切れもあった。
ここは秘密の書斎なのだろうか・・・?
そもそも、なぜ秘密としているのだろう・・・?
「・・・これだ!」
王は埃を被った一冊の本を引っ張り出し、荒々しくページをめくり始めた。
「・・・・・・・・・・・・」
リヴァイには、父が何を調べようとしているのか見当もつかなかった。
ただ、自分やレオノアが風邪を引いたり、ケガをした時とは違って医者を呼ばず、何か別の処置を施そうとしていることだけは明らか。
声をかけることもできず、小さな胸は不安と恐怖で今にも張り裂けそうだった。
どうか早くレオノアを治療して欲しい。
死んでしまったら、自分は・・・自分は・・・
「北の山・・・ユミル・・・巨人・・・」
時折、父の口から漏れる単語は、まるで恐ろしい呪文のよう。
北の山とは、城から見える棘のような山頂の険しい山。
ユミル・・・確か、自分が5歳の頃、まだ生きていた祖母からその名を聞いたことがあるような気がする。
この国を滅ぼそうとした、恐ろしい巨人だと・・・
祖母はあの時、なんて言っていたっけ・・・?
“ 私の可愛いリヴァイ・・・お前の力は・・・・・・ ”
俺の・・・力・・・
それを聞いた時は幼すぎたため、リヴァイは祖母の言葉を覚えていなかった。
ただ、それを聞いた夜は、風が窓を揺らす音ですら怖くてたまらなかったことだけ覚えている。