第5章 お仕事
ーーえっと、ここだっけ?
先日通して貰った部屋の扉に、私は来ていた
扉には小さく、団長室と書かれてある
エルヴィンは調査兵団の団長だし、間違ってはいないだろう
コンコンっと、扉を二度叩くと中から、どうぞっと言った声が聞こえた
「……失礼します」
中に入ると、どうやらお取り込み中だったようだ
団長と、女性……?の様に見える、中性的で眼鏡をかけた顔立ちの人が、椅子に座っている
「あぁ、サーヤちょうど良い時にきた、紹介しよう」
そうエルヴィンが言うと、手前の眼鏡の人を見ながら言った
「君がサーヤちゃんだね!私は、ハンジ・ゾエ。エルヴィンから話は聞いたよ」
にかっと人懐っこい笑顔を浮かべ、ハンジは右手を差し出す
ハンジ……あ、さっきの書類に書いてあった、名前の人だ
エルヴィンのとこに居たのなら、ついでに書類を持ってくれば良かったなぁ
先程までの書類の山を思い出しながら、私はハンジの右手を握った
「サーヤです、よろしくお願いします」
丁寧に挨拶をして、右手を離そうとする
だが、ハンジは興奮した面持ちで、そのまま右手を自分の方へ引き寄せると、その上に左手を重ねた
「………わっ!」
「サーヤちゃんはさぁ、壁の外で巨人と遭遇した?」
キラキラと輝く瞳で、サーヤを見ると、握られた右手に力がこもった
「いっ……いえ、残念ながら巨人には遭遇しませんでした」
そう言うと、ハンジは右手の力を緩め、脱力する
残念そうに、そっか……と呟いた
そんなハンジが、可哀想に思えて、私は気を取り直した様に話をふった
「あ……でも、巨人には興味あります」
「本当!!」
光を失っていた瞳が、再度輝きだす
コロコロと表情が変わって、面白い人だなぁ
それに、巨人に興味があるのは嘘じゃない
出来るなら、話を聞いてみたい