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テニスの王子様 短編集

第1章 手乗り紳士(柳生比呂士)


後ろから突然クラスメイトに話しかけられ、
パニックになった私は小さい柳生くんを
手のひらに包み急いで教室を後にした。
さっきの私は傍から見れば人形に
話しかける痛い子だったんだろうなぁ…
とりあえず人気がない場所に行かないと…
また痛い子だと思われてしまう。

『ここなら…大丈夫…かな・・・?』

来たのは校舎裏の木陰。
普段から人通りは少ない。

『柳生くん…ごめんね…大丈夫だった?』

潰してしまったかも、と心配しながらも恐る恐る手を開く。

『だ…大丈夫です…』

少し苦しそうだったが柳生くんは無事だった。
状況は何も変わっていないが少しホッとして口元が緩む。

『あのさ…これからどうする…?』

『…すみません…突然の出来事に混乱して…
そこまで頭が回りませんでした…』

『そっか…そうだよね…』

そうだよ…今一番混乱してるのは柳生くん自身なんだ。
私が何とかしないと…
流石の柳生くんでもこんな状況だと
どうすればいいかわかんなくなっちゃうよね…

『とりあえず今日は私の家に来る?』

『…え…!?』

私の手のひらの上で柳生くんが吃驚した。
こんな表情の柳生くんなんか普段はなかなか見られない。激レアだ。

『いや…この状況知ってるの、今のところ私たちだけじゃん?
他の人に相談して大事にするのもあれだし…』

というのは嘘。
本当は柳生くんと一緒にいたかったから。
そんな事は口が裂けても言えない。
言ったらきっと柳生くんをますます混乱させてしまう。

『本当に…いいんですか?』

『いいよ、困った時はお互い様だよ。』

柳生くんを少しでも安心させたくて、
自分に出来る精一杯の笑顔を作る。
好きな人の前で笑うのってこんなに難しかったのか、と実感する。

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帰宅するまで柳生くんはずっと私の手のひらの中で大人しくしていた。
私に気を遣ってくれていたのだろうか。
柳生くんが何を考えていたのかわからないが、
私は緊張で手に変な汗をかかないか心配で心臓がバクバクだった。

『お疲れ様、ここが私の部屋だよ。』

無事帰宅し、自分の部屋に入った私はテーブルの上に柳生くんを解放した。

『お邪魔します。』

ペコリと礼儀正しくお辞儀する柳生くん。
この姿だと何をしても可愛いから困る。
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