第1章 手乗り紳士(柳生比呂士)
●手乗り紳士(柳生比呂士)●
今、私の目の前で有り得ない事が起こっている。
一体なぜこんな事が起こっているのか。
混乱して言葉が出てこない。
だが、多分今一番混乱しているのは当の本人だろう。
『…一体、何が起きたんですか…』
それは私のセリフだ!!…と言いたいのだが
その言葉さえも出ずに目をパチクリすることしか出来ない。
放課後、部活に入っていない私はいつものように
サッサと帰ってしまおうと席を立った。
するとどこかで微かに私を呼ぶ声が聞こえてきた。
『さん…!!さん!!』
最初は気のせいかと思ってスルーしていたがよく耳を澄ますと
下の方から声が聞こえてくるではないか。
すかさず下を見るとそこには小さい手のひらサイズの
---柳生比呂士がいた。
そして今に至る。
『や、柳生くん!?ど…どどどどうしたの!?』
『わ…わかりません…!!気が付いたらこんな事に…!!』
柳生くんは私の机の上にちょこんと立って
わたわたととても可愛らしい動きをしていた。
『ていうか…ほんとに柳生くんなの…!?』
柳生くんが小さくなるという非現実的な事態が信じられない
私はその小さくなった柳生くんを
つんつんとつついたり、つねったりしてみた。
かなりよく出来た人形なのではないか。
私はフィギュアとかに関してはあまり詳しくないが、
ねん○ろいどとかこんな感じだった気がする。
『い…痛いです…やめてください!!』
『ご…ごめん…ちょっとやりすぎた…』
つつきすぎて柳生くんに怒られてしまった。
しかしこんなに小さいと怒られても全く怖くない。
むしろ可愛い。
『ほんとに柳生くんなんだね…』
『、さっきから誰と喋ってんの?』
『わっ!!な、なんでもないよ!!私、帰るねばいばい!!』