第6章 かわいい後輩(海堂薫)
…図書室…図書室はテニスコートのすぐ横の校舎の二階だ。
俺はすぐに図書室がある校舎の二階の窓を見た。
するとそこには一瞬だが確かに人影が見えた。
俺が見るとすぐに人影は身を隠した。
『…あの野郎、隠れやがって…!!』
俺は正々堂々と姿を現さない奴に怒りを覚えた。
『待て海堂、今は部活中だ。』
『…フシュー…』
結局、乾先輩に止められ、図書室に行くことは出来なかった。
その後も俺を監視する視線は消えなかった。
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その日の部活終了後、俺はジャージ姿のまま図書室へ向かった。
放課後の人気のない校舎を小走りで急ぐ。
部活終了ギリギリまで視線を感じた。
今から行けばきっと間に合う。
犯人を見つけたらただじゃおかねぇ…
あっという間に二階の図書室に到着した。
図書室内はしんと静まり返り、窓からの夕焼けでオレンジ色に染まっていた。
『…チッ…逃げられたか…』
悔しいが今日は諦めて帰ろうとした時、
視界の隅っこに誰かが映った。
窓際の席、そこに一人の少女が机に突っ伏して眠っていた。
『…もしかして、お前が…』
『…ん…』
少女が目を覚ました。
グーンと伸びをして、寝ぼけ眼で海堂を見上げる。
『あれ…海堂先輩がいる…なんだ…夢か…』
そう言うと少女はまた机に突っ伏してしまった。
『おい!!お前、起きろ!!』
『…ん…もう少し寝かせて………って海堂先輩!?本物だった!!』
少女は完璧に目覚めたようだ。
俺を見るなり異常に焦りだした。
『な、なんでここに…!?』
『お前、部活中に俺のこと見てただろう。』
『…う、はい…』
ギロリと睨むと少女はしゅんとして下を向いてしまった。
なんだか罪悪感を感じてしまう。
これではまるで俺が悪者みたいではないか。
『…なんで見てた。』
なるべく少女をビビらせないように小声で聞いた。
すると少女はさっきとは打って変わって顔を赤くした。
『お、応援…してたんです…』
…応援、少女の口から意外な単語が出た。
てっきり監視、スパイの類の言葉が出るかと
思っていた俺は拍子抜けした。
『私、図書委員で放課後は毎日ここで仕事してるんです。
それで窓の外を見てたら偶然海堂先輩がいて…
それから密かに海堂先輩を応援するようになりました…』