第5章 保健室の王子様(白石蔵ノ介)
少しの間その男子に見とれていて返事が遅れてしまったが、
なんとか指差しで包帯のありかを教えることが出来た。
何がどこにあるかは大体把握している。
伊達に保健室登校していない。
誇れることじゃないけど。
『ああ、そこの棚か…?ありがとうな。』
その綺麗な男子は軽く微笑んで左手を上げた。
その左腕には包帯が巻かれていた。
怪我…だろうか。
『これ、怪我とちゃうで?』
『…!!』
…心を読んだ!?この人はエスパーか…!?
私は危険な人物と関わってしまったのかもしれない。
心臓の音が速くなり、警戒心も増した。
『君、名前なんていうん?』
『…お、教えない…』
というかエスパーなんだから本当は
私の名前くらい知っているのではないか…!?
『そか、それは残念やなぁ…俺は三年の白石蔵ノ介や。』
…だから何…?
もしかして私、やばい人に目をつけられた…!?
『よろしゅうな。』
『………』
白石蔵ノ介、と名乗った男子はそれだけ
言って保健室を後にした。
私はその後姿をジト目で見送った。
…変な人…なんか少し馴れ馴れしいし…
けど、保健室の先生以外の人と話すのって久しぶりかも。
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白石蔵ノ介が保健室を後にして数分後、
狙いすましたかのようなタイミングで保健室の先生が戻ってきた。
『どうしたの?ボーッとして。』
『さっき、白石って人が包帯取りに来ました。』
『あぁ、白石…ってテニス部部長の?』
『え…知りませんけど…』
私はこの通り保健室にしかいないので
学校の生徒に関する知識は皆無だ。
『そっか…でも包帯取りに来たなら
多分テニス部の白石くんね。』
『…どんな人なんですか?』
『あら、気になるの?』
先生がニヤニヤして面白がっている。
『…ち、違います…そんなんじゃないです…!!』
…そんなんじゃない…私はあの人に…
あのエスパーの人に目を付けられたのかもしれないのだ。
『白石くんはさっき言った通り、テニス部の部長よ。
時々保健室に包帯取りに来るけど…』
そういえばさっきも包帯探してたし、
腕にも包帯巻いてたっけ。
『…怪我してるんですか?』
『さぁね~…本人に直接聞いてみれば?』
『…無理!!』
うん、絶対無理。
人と話すのが苦手でここにいるのに。