第5章 保健室の王子様(白石蔵ノ介)
●保健室の王子様(白石蔵ノ介)●
学園生活を普通に送っていて、
一番過ごす時間が多い場所は『教室』のはずだけど、
私の場合は『保健室』なんだ。
何が言いたいのかというと、
私が保健室登校の生徒であるということ。
『…おはようございます。』
朝、少し遅めの時間に登校して真っ先に保健室へ向かう。
そして保健室の先生に挨拶をする。
これが日課となっている。
私はかなりの人見知りで、人がたくさんいる所が苦手。
人と話すのも苦手だが、周りに人がいるだけでも駄目なんだ。
あの人たちは今、私の悪口を言っているのではないか、
まずそんな事を考えてしまう。
そして考え始めたらもう止まらない。
私の考えはネガティブな方へばかり向かい、
頭の中はどんよりブラックに。
最初は学校にも行かずに家に引きこもっていたが、学校の先生に
『保健室登校でも構わないから学校へ来なさい』と言われ、今に至る。
『さん、おはよう。』
保健室の先生はいつも優しく挨拶してくれる。
私が心を開いて話すことが出来る、数少ない人間だ。
私の学校生活は保健室で始まり、保健室に終わる。
トイレに行く時以外は基本、保健室から出ない。
保健室から出ると人がいっぱいで、かなり危険な世界だ。
なので生徒がほとんど下校し終わるまで保健室に残り、
帰りは結構遅くなる事が多い。
今日もそんな風に一日を終えるはずだった。
『すいません、包帯ありますか?』
ガラッと戸が開き、一人の生徒が入ってきた。
私はなるべく目を合わせないように下を向いて、
その生徒が去るのを待った。
『あれ…?先生おらへんのか…』
…早速大ピンチだ。
今、保健室には私しかいない。
足音がどんどん私に向かって近付いてくる。
私の近くで足音は止まり、代わりに声が降ってきた。
『なぁ君、包帯どこにあるか教えてくれへん?』
これは…私に聞いているんだよな。
恐る恐る顔を上げて声の主の姿を目撃する。
『…わ…』
そこには思わず見とれてしまうほど綺麗な男子が立っていた。
サラサラな髪の毛に、スラッとした身長はモデルのようだった。
とにかく綺麗という言葉が一番しっくりくる、
そんな容姿をした男子だった。
『…?』
『…あ…包帯…多分そこ…』