第1章 無人駅
「困ったわね。ここがどこかもわからない上に助けも呼べないなんて」
「だから反対側の電車が来たら乗りゃいいじゃねーか」
「…あんたねぇ、こんな時間にこんな何もない所に電車が来ると思ってるの?」
そう、辺りには何もなかった。線路を挟んで反対側のプラットホームの向こうは山の斜面になっているらしく、一面に彼岸花が咲いている。赤い絨毯のように斜面は続いていた。駅舎のあるこちら側のホームの周りは開けているが、近くには民家はないようだ。静かな闇に包まれている。
「え?レオ姉こんな時間って、まだ8時だよ?」
葉山が携帯の画面を見ながら言うと、根武谷が口を挟んだ。
「何言ってんだ小太郎?もうすぐ10時だぞ」
「あんたたちの時計おかしいわよ?もう11時過ぎてるじゃない」
「僕の時計は19時13分だが」
赤司以外の三人がもう一度時計を見る。それぞれが間違いではないことを確認すると、赤司が口を開いた。
「時計もダメとなるとますます危険だな」
「だけど征ちゃん、これからどうするの?時間も場所もわからない上に助けも呼べないのよ?」