第5章 唯一無二の存在
「赤司くん……っ」
甘い声で彼女は僕を抱きしめ
僕の心をうけとめながら
僕にキスを落とした。
甘い甘い、キス。
ずっとずっと、
誰かが支えてくれるのを
待ち望んでいた。
心の支えになる人を。
探していたけど自分から拒んでもいた。
「涼音…
すまなかった…」
「ううん、大丈夫だよ。
赤司くんは優しいんだね…」
「なにも…知らないくせに…
優しいなんて言うな…」
俺はまた冷酷な眼で彼女を睨んだ。
なのになんでだ?
彼女は笑っている。
バカにした笑いではない。
いたわるような、
俺の心に寄り添ってくれているような
そんな顔で
「なにをそんなに
苦しんでいるの…?」
と俺を抱きしめた。
初めて感じた、ぬくもり。
頬を生温かいものが伝う。