第5章 唯一無二の存在
部員たちは彼女からもらった
ドリンクを片手に桃井さつきからの
アドバイスをきいたり、
楽しそうに話したりしている。
「私ね…」
「?」
彼女は僕を抱きしめたまま、
話し始めた。
「双子お兄ちゃんがいるの。
モデルもしてて、なんでもできるの。
かっこいいし、面白いし、優しいし。
まさに誰がみても完璧ーって
お兄ちゃんなんだけど…
家に帰ってくるとね、
私に色々悩み事言ってくれたりとか
寂しがり屋なところもあってね?
やっぱり完璧なんてないと思うの」
「俺は…」
"完璧だ"そう言おうとしたが
口ごもる。
心のどこかで涼音の兄のように
誰かと打ち解けて話したいという
願望が芽生えていたからだ。
もう何年も前から。