第9章 図書館//黒子
『わかったー!楽しみにしてる』
『僕もです』
メールを続けていると、火神くんが僕のケータイを覗いてきた。
「え!黒子が女子とメールしてやがる…」
「!人のケータイを覗き見るなんて、変態ですか火神くん」
「へ、変態⁈気になったんだから、しょうがねぇだろ!」
「プライバシーの侵害です」
「プッ…?!」
ギャーギャー反論してくる火神くんを無視して、早めに帰宅する。
こんなに、誰かと会うことを楽しみに思ったことなんてない。
自分でも不思議な感覚だったが、悪い気はしなかった。
日曜。
僕は早めに目が覚めて、約束の30分前に待ち合わせ場所に到着した。
早く来すぎましたね…。
手元に持っていた小説を読みながら待っていると、彼女は5分前に姿を見せた。
「黒子くん、おはよう」
「あ、真奈美さん」
「あれ?もしかして、待たせちゃった?ごめんね!」
「いえ、先程来たばかりです。真奈美さんは遅刻したわけじゃありませんから、謝らないでください」
行きましょう、と二人で国立図書館へ歩く。徒歩10分ほどの道のりのようだ。
「私、黒子くんに誘ってもらえるとは思わなくてビックリしちゃった」
「どうしてですか?」
「いつも笑ってもらえないから、嫌われてるのかと思ってたんだ」
「…すみません」
「え!謝らなくていいんだよー!私こそごめんね、失礼な発言だったね」
普段から無表情な僕は、そんな風に真奈美さんから見られてたんですね…。
「いえ、言って欲しいです。自分では気づかないので。…ちなみに、真奈美さんのことは嫌ってません」
むしろ好きです。
と、本当は言ってしまいたいところですが…。
「良かったー。私も黒子くんのこと嫌いじゃないよ、むしろ好きかも」
ふふ、と彼女は微笑む。
僕は彼女の言葉に目を見開く。
きっと、真奈美さんが言う《好き》は僕のとは違う、
でも、彼女の口から僕に対して《好き》の言葉が聞けただけで、耳が赤くなる。
黙っている僕を不思議そうに見つめた後、自分の発言に気づいたのか、顔を赤めて焦り出す。
「ご、ごめんね。変なこと言っちゃったよね」
「…いえ。僕も好きです、真奈美さんのこと」