第9章 図書館//黒子
「あ、黒子くん。最近よく会うね」
「そうですね」
話しかけてきたのは、同じ学年の岬 真奈美さん。
同じクラスではないのだけど、最近図書室に行くと会うことが多い。
「黒子くんは本当に本が好きなんだね」
「それは、真奈美さんも同じですよね」
彼女はそうだね、と言って微笑む。
「私たち、読む本の趣味も似てると思わない?同じ本読んでることよくあるもんね」
確かに、手に取る本の貸出カードには、彼女の名前が書かれていることが多い。
「確かに、真奈美さんの名前をよく見ます」
「私も!似てるんだねー」
ニコニコしながらそう話す真奈美さんに、胸が高まる。
真奈美さんは最初から、僕に気付いてくれた数少ない人だ。
だから、僕は真奈美さんのことが気になっていた。
優しくて、可愛い人。
「…今度の日曜、部活が休みなんですが、一緒に国立図書館に行きませんか?」
今まで部活に休みが無くて、誘ったことなんてなかった。
…断られたら、立ち直れません。
「日曜?うん、いいよ。国立図書館って行ったことない!一緒に行こう」
「…はい」
安堵の笑みが漏れる。
きっと、彼女は僕には興味ないだろうけど、それでも二人で過ごせるというだけで嬉しい。
「…あ」
突然思い出したかのように、彼女は声を上げる。
「私、黒子くんの連絡先知らないや。教えてもらってもいい?」
「そういえば、そうでしたね」
お互いケータイを取り出し、電話番号とメールアドレスを交換した。
「楽しみだね。じゃぁまたね」
「はい」
そう言って彼女は手を振り図書館を出る。
…日曜が楽しみで仕方ない。
僕も、本を片付けると図書館を後にした。
その日の部活の帰り道、彼女からメールが届いた。
『こんばんは。日曜、どこで待ち合わせするのがいいのかな?』
初めての彼女からのメールに、頬が緩む。
一緒にいた火神くんが不思議そうに僕のことを見る。
「何ニヤついてんだよ、黒子」
「火神くんには関係ありません」
プイと顔を背けると、彼は「そうかよ」と溜め息をつくが気にしない。
僕はすぐ返信をする。
『こんばんは。10時に◯◯駅で待ち合わせにしましょう』