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黒子のバスケ夢 短編集(一章完結)

第8章 ヒーロー//氷室夢


彼女の自宅まで送る途中、色々なことを聞いた。


現在大学一年生で、俺の二つ上であること。

出身は東京であり、秋田には大学に入ってから来たこと。

今、恋人はいないこと。




話している中で、敬語は使わなくていいと言われる。

お言葉に甘えて、お互い敬語はやめることになった。



「どうして、恋人を作らないの?こんなに綺麗なら、男なんて引く手数多だろ」

「どうしてと言われても…。私そんなにモテないよ、地味だもの」

「確かに派手じゃないかもしれないけど、とても綺麗だよ。…それとも、すごく理想が高いとかかな」

「そんなことないと思うんだけど…。理想が高いというよりは、ちょっと男性が苦手だったかな。中学も高校も、女子校だったし」

「ん?苦手というのは、どうしてなんだ?」

「私ぼーっとしてるように見えるのかな、外で声かけられることが多くて。今回みたいに、腕を引っ張られるってことも何度かあったの。だから男性って力も強いし、怖いって印象があって…」


苦笑しながら、「なんで私なんだろうね…」と呟く彼女。
そんな彼女の頭を優しく撫でる。


「もしかして、俺と帰るのも怖いかな…?」


「えぇっまさかっ」

彼女は俺の言葉を聞いて、大袈裟に首を振って否定する。


「氷室さんは私を助けてくれた、ヒーローだから…」


怖いわけないよ、と彼女は照れたように微笑む。


「そう…なら、良かった」


話しているうちに、彼女の家に到着した。
俺の寮から徒歩5分くらいの、小綺麗なマンションだった。


「今日は本当にありがとうございました」


「じゃぁ、また明日。駅着いたら連絡してね。黙って一人で帰ったらいけないよ」


「はい」



ふふ、と彼女は微笑み、「じゃぁ…」とエントランスに入って行く。





見えなくなるまで彼女を見送り、俺も帰路につく。




…心配なのも確かにあるけど、綺麗な彼女に下心が芽生えた、というのも本音だ。




真奈美、ごめん。



俺はヒーローでい続けることは出来ないかもしれないよ。



…明日が楽しみで仕方ない。
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