第5章 きっかけ///黄瀬夢
『真奈美は全然いいんだけどさぁー、だいちゃんがほんとスケベなの!酔った勢いだと思うんだけど、寝てる真奈美にチューしようとすんの!どう思う?!』
「…え?」
『最低でしょー!ほんと信じられない!』
電話越しにプンプン怒る桃っち。
いやいや…怒りたいのは俺っすよ…!
「青峰っちはまだそこにいるんすか?」
怒りを抑えて聞いてみる。
『ううん、もう帰っちゃったよ』
「いくら青峰っちでも、そんなことしたらぜってー許さないっす!…とりあえず真奈美を早く帰してもらっていいっすか?」
『きーちゃんが怒ってる!わかったよー』
後で真奈美が「なんでそんなこと言うの〜!」という声が聞こえた。
もう絶対真奈美を1人で飲みには行かせねーっす…
一時間程して、彼女が帰ってきた。
「ただいまー」
「…おかえり」
ムスッとした顔をして、ソファから動かない俺。
俺だってちょっと怒ってるんすよ。
少しくらい、態度に出してもいいっすよね。
「黄瀬くん、怒ってるの?」
「…怒ってるっす」
「ごめんね、連絡しなくて。昨日、帰るの早かったんだね」
「それも嫌だったっすけど…本当なんすか?」
「?何が?」
「青峰っちにチューされそうになったって…」
「あー…」
真奈美は俺の隣へちょこんと座り、考えるポーズをしてる。
「私、寝てたから覚えてないんだ。でも、さつきちゃんが必死で止めてくれたって言ってたよ!」
だから、大丈夫!
って、全然大丈夫じゃないっす!
「真奈美は危機感無さすぎっす!なんで俺以外の男の前でそんな無防備になっちゃうんすか?!男なんてみんな野獣なんすよ!」
「えー…でも、青峰君だよ?酔っ払ってたみたいだし、あんまり気にしなくていいと思うんだけどなぁ…」
「俺心配でしょうがないっすよ!仕事仲間の人たちとか、俺知らないし、何されててもわからないじゃないっすか!」
「何にもないよ〜大丈夫だよ」
「真奈美は可愛いんだから、もっと気をつけるべきっす!」