第5章 きっかけ///黄瀬夢
「ただいまー」
マンションのドアを開けると電気は点いておらず、真っ暗だった。
あれ?真奈美まだ帰ってきてないんすかね。
ケータイを確認するも、連絡はない。
もう9時を回ってるし、いつもなら帰っている時間だ。
真奈美に電話をしてみるが、繋がらない。
「どこ行ってんすかー真奈美ー」
夕飯は俳優仲間と食べてきたけど、本当は真奈美の手料理が食べたかった。
仕方がなく、ソファに座り、暇潰しにテレビをつける。
興味もない番組をつけても、面白くもない。
「真奈美とイチャイチャしたかったっすー!」
我ながら大きい独り言だ。
本当にどこにいっちゃったんすか。心配になっちゃうんすけど。
いつの間にか、ソファで寝てしまっていたらしい。
時間は、午前4時…
真奈美はまだ帰ってきていないようだった。
焦ってケータイを見ると、チカチカと光っている。
メールだ。
『きーちゃん、真奈美は酔って私の部屋で寝てるからねー!もーだいちゃんが飲ませすぎるからー。起きたら連絡するから、心配しなくて大丈夫だよー」
桃っちからだった。
真奈美は中学のバスケ部マネージャーだったので、キセキの世代全員と面識があり、たまに飲みに行くらしい。
それにしても、あらかじめ言っといて欲しいっす!
1人でむくれ顏になるが、彼女はとりあえず大丈夫そうだ。
ベットに入ってまた眠ることにした。
プルルル…プルルルル…
ん…?
ケータイが鳴っている。もう9時を回っていた。
画面を見ると、そこには『真奈美』の文字が。
慌てて電話に出る。
「真奈美⁈」
『あ、黄瀬くん?おはよう。昨日は帰れなくてごめんね』
「ほんとっすよ!もー!今どこにいるんすか?!」
『今、さつきちゃんのおうちだよ。これから帰るつもりだけど、黄瀬くん仕事行っちゃう?』
「今日はオフっす!」
『そっかぁーじゃぁすぐ帰るね』
「待ってるから、早く帰ってきて欲しいっす」
『うん、ごめんねーってちょっとさつきちゃんっ』
ここでどうやらケータイを桃っちが奪ったらしい。
『ちょっとーきーちゃん!』
「あ、桃っち!真奈美がお世話になったっすね」