第3章 可愛い君へ//氷室夢
確かに、真奈美は綺麗というよりは小さくて可愛らしいタイプで、いつも幼く見られると前に気にしていた。
「関係はないけどさ〜、でも真奈美ちん室ちんに興味なさそうじゃん」
ぐっ…
敦は何気なく言ったのだろうが、俺の傷口に塩を塗る言葉だ。
「室ちんのこと狙ってる女いっぱいいんじゃん。そんなに真奈美ちんにこだわる必要なくない〜?」
「…男を狙うような女に興味ないんだよ」
どうしてこんなに彼女が気になって仕方ないのか。
自分でもよく分かっていない。
俺が気になり始める前までは、彼女も話しかければ笑顔で答えてくれたのに…今となっては…。
「真奈美ちん、室ちんにからかわれてると思ってんじゃない〜?」
「…え?からかってなんかいないよ」
「俺は分かってるけどさ〜。真奈美ちんは、あんま自分に自信ないみたいだし〜。室ちんモテるから、からかわれてると思ってても不思議じゃないかな〜って」
そんなこと思ってもみなかった。
思えば今まで、自分から女性にアプローチしたことなんてなかった。
「敦、感謝するよ。今から、本気だってことを伝えてくる」
俺は急いで着替えを済まし、彼女の元へ向かった。
どうか、まだ帰ってませんように。
体育館を見回すと、最後の片付けを終えて帰ろうとしていた彼女を見つけた。
「真奈美!」
急いで呼び止めると、やはり怪訝な顔をされる。
「まだ何か用ですか」
俺は荒い息を整え、考えた。
彼女に、本気を伝えるにはどうしたらいいのだろう。
また、俺に飛び切りの笑顔を見せて欲しい。
君の笑顔を見るだけで、心が癒されるんだ。
「…俺は、真奈美が好きなんだよ」
一瞬驚いた表情になった後、「はぁ…」とため息をつかれる。
「氷室先輩。…その告白は、罰ゲームか何かですか?」
敦の予想は当たっていた。
本当にからかわれてると思っていたのか…。