第12章 本当の気持ちを
決心したことによって、なんだか私の中でも吹っ切れてきた気がする。女子に冷たく当たられても、なんだか堂々としていられた。
『私たちは東堂様のファンなの! 大好きなの! 会長に何がわかるの!』
「そっか、私と同じだね」
『えっ』
「私も東堂のこと、好きだから」
今思えば、彼女たちから東堂に私の気持ちが伝わってしまったらどうしよう、なんて思うけど。
私の生徒会としての任期も前期で終わる。それに向けていろいろと資料を残していく作業が続いている。
「今日はここまでかな」
私は小さく伸びをしてから、生徒会室を後にする。
(インターハイは2日後。自転車競技部のみんなの表情も少し固い)
練習中はとてもじゃないけど話しかけられるものではない。
だから、私は自転車競技部の活動が終わるころを狙って学校を出るのだ。
案の定、私の予想した時間はぴったりだったらしい。選手達がそれぞれ自分のロードバイクを引いている。
「よっ、宮坂さん」
突然後ろから声が聞こえ、私は瞬時に体の向きを変えて臨戦態勢をとる。
「なんだ、新開君か。びっくりした」
「驚きすぎだろ! 何、生徒会の仕事帰り?」
「まぁね。後継者がいない状態で引き継ぎ資料をつくるのはなかなか辛いけど」
私が小さく笑うと、新開君は優しく私の髪をなでる。
「おめさんもこんな時間までお疲れさん」
「自転車競技部のみんなだって、2日後のインターハイの為に頑張ってるでしょ? 応援行くからさ」
「そりゃあ心強い」
「宮坂さん!」
遠くから東堂の声が聞こえる。こちらへブンブンと手を振っている彼。ほんと、あのカチューシャはよく目立つ。遠目で見ても一瞬で東堂だってわかるさ。
(あれ、こっち来た)
東堂は全力疾走でこちらへやってきて、私の手をとる。
「宮坂さん! 俺は、俺はインターハイで山岳リザルトをとってみせるからな!!」
「う、うん」
(山岳リザルトってなんだろう)
「だから、その、みててくれ!!」
そう言い放った時の東堂の表情は妙に清々しくて。
「俺も箱根学園のエーススプリンターとして恥じない走りをしてくるさ」
(スプリンターってなんだろう)
用語は後で調べよう。
見届けるよ、箱根学園のみんなが頂点に立つのを。