第3章 出会い 〜東堂編〜
「あ。学校のホームページ更新しなきゃ」
「ンだよ、お前はそんな雑用までやってんのかヨ」
「雑用とか言うな。これも立派な生徒会の仕事ですから!」
すっかり忘れていた。毎週更新しているものだけど、今日は入学式だから特別に更新しようとしてたんだ!
私はため息をついてパソコンから離れる。
「あれ、荒北。今日から仮入部あるんだっけ?」
「会長のくせに覚えてねーのかよ?」
「あーはいはい。もう荒北には聞かないから。自分で調べるからとりあえず生徒会室から出て行きなさい?」
「……今日から仮入部アンヨ」
そうなると、入学式の話をホームページに載せるついでに仮入部の様子も写真で載せよう。
「荒北! 私、今日の放課後に自転車競技部まで写真撮りに行くね!」
「ハア?!」
「大丈夫、ビジュアル重視だから荒北は撮らないよ?」
荒北はこめかみをヒクつかせながらも、懸命に自らの拳を押さえ込んでいる。
「あー……ビジュアル重視なら、あいつかな」
「……あいつって?」
「登れる上にトークも切れる! 更にこの美形! 天はオレに三物を与えた!! 箱根の山神天才クライマー東堂とはこの俺のことだっ!! よろしく!!」
「……あ、ぁぁ。よろしく」
放課後、自転車競技部に来てみると、確かに美形はいた。男のくせにカチューシャをしているのは謎だが、確かに顔立ちは整っているし。
「えっと? 山神東堂って名前? 山神さん? 東堂さん? 苗字と名前、どっちで呼べばいい?」
私の純粋な問いに近くの荒北が吹き出して腹を抱える。
「ぐっ……! 荒北! 笑うな! 会長さんにはちゃんと俺から説明するからな!」
山神東堂君は顔を真っ赤にして荒北を指差す。そして、しっかりと私の方に向かい直る。
「自己紹介がうまく伝わっていなかったようだな。俺の名前は東堂尽八! 自転車競技部2年、クライマーだ!」
「あ、それが本当の名前ね?」
「わ、分かりづらかったようですまん」
(東堂尽八……なんだか、聞いたことがあるような)
自分の胸にあるこのモヤモヤ。
「私は生徒会長の宮坂葵。今日は自転車競技部の写真を撮りに来たの。ホームページに載せたいんだけど、東堂君を撮らせてもらっても大丈夫?」
「うむ! 構わんぞ!」
古風な話し方をするなぁ。