第2章 出会い 〜荒北編〜
半ば強引に荒北くんを連れ、近くのファミレスに入る。店員さんは荒北くんの風貌に驚いていたけど、平然を装って席へ案内してくれた。
「荒北くんはもう夕飯食べた?」
「……食ったけどォ」
「私まだ食べてないんだよ、君を探してたら食べそびれてさ」
「ホントに何がしたいワケ?」
「あ、オーダーお願いしまーす!」
「聞けよ!!」
私はオムライスを注文し、店員がいなくなってからじっくりと荒北くんの顔を見た。
(……下睫毛目立つなぁ)
「さっきから人の顔をじろじろと見てんじゃねぇよ!」
(ヤンキーになりきれてないヤンキーか。こういう人は自分の欲求不満を周りに当たり散らしてるだけなんだ)
「荒北くんは、好きなことってあるの?」
「ンだよ、説教か?」
荒北くんは面倒臭そうにヒラヒラと手を振る。
「まさか! 純粋な疑問だよ。自分の足で動かすわけでもなく、エンジン任せの乗り物を乗り回してて君は楽しいの?」
「喧嘩売ってんのか!! てめぇは今、全国のバイク乗り敵に回したぞ! エンジンっていうなら車も!」
「君はきっと、楽しくないと思うな」
最初の見たとき、彼の体はスポーツマンとして出来上がっているのだと思っていた。
(何が理由か知らないけど、この道に走ったんだ、彼は)
せっかくの青春を、楽しくないことで潰して欲しくない。彼は健康体で生きてるんだから。
「バイクや車を否定してるんじゃないよ。楽しくもないことで時間を潰して、他に当たり散らしてる今の荒北くんを否定しただけ」
「……!」
荒北くんの目が大きく開く。……図星か。
「生きてるならさ、1番楽しいことをしなよ。あと、その髪型……」
見れば見るほど笑いがこみ上げてきそうなリーゼント。
「ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開化の音がする!」
「……は?」
「明治維新の時の歌だよ。身近なところから変えていけば、何かに気付けるかもしれない、ってね」
そう言って、その後は会話を交わすこともなく私は黙々とオムライスを食べた。
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その後、荒北くんが自転車競技部に入部したと聞いた。
(今度こそ、楽しめてるかな)
すると、生徒会室にノックもせずに入ってきた男が。
「よォ」
彼は黒髪短髪の、爽やかなスポーツマンに変化していた。