第10章 我らの黄金週間
後ろから聞こえた冷たい声。でも、私はその声を知っている。彼はこんな声色を出す人じゃないはずなのに……。
「新開君……」
新開君は今まで見たこともないような憎悪に満ちた目で私の手を掴む男を睨む。
「彼女から手を放せ」
「は? 何言ってんの」
「放せ」
「話すわけねーだろ」
「放せ」
男も新開君相手に何かを感じたのか、小さく舌打ちをして私の手を放し、どこかへ去っていった。
「……助かったー」
「宮坂さん!」
新開君は私の両肩に手を置き、顔を覗き込んでくる。
「嫌なことされてないか? 大丈夫か?」
「大丈夫だよ、でも、新開君のお陰で助かった! ありがとね」
新開君はため息をつき、私の額にデコピンを食らわす。
「痛っ」
「警戒心を持て! もし俺がいなかったら、今頃どうなっていたかわかってるか?」
「……ゴメンナサイ」
「頼りにしてくれよ。俺はそこらへんの男相手に喧嘩で負ける気がしないしね。宮坂さんのこと、守りたいから」
「確かに。新開君の胸筋凄いもんね。そりゃあ負けないだろうよ」
私の言葉に新開君はブッと吹き出す。今のどこに笑うところがあったのさ!
「ちょっ、なんで笑うの?!」
「いやいや……そういうことじゃないのに、って……。まあ、いいや」
すると、新開君はさらに私との距離を詰めてきて、そっと私の手を取り、自らの胸に当てさせる。
「うわぁ……! 固い! すごい筋肉! 初めて男子の胸筋触ったよ」
「初めてで良かった。……な? すごい胸筋だろ」
新開君の固い胸。普段から鍛えている証拠だ。
「なんか、かっこいいよね、新開君」
なんとなく口に出た言葉。私はそう言って新開君を見上げると、新開君は顔を赤らめる。
「え、あ、ありがとう……」
「新開! 宮坂さん!」
「おいおめぇら無事かァ?!」
「会長!」
三人がこちらに駆け寄ってくる。
「私、本当に良い友達を持ったよ」
「……だな」
私は彼らにいつも助けられる。いつか、私も彼らを助けることができたら……。彼らの大事な時に、そばにいて助けられたら……。
最近、そう願わずにはいられないんだ。