第11章 女同士の
あっという間にゴールデンウィークは過ぎ去り、また、いつも通りの学校生活が始まる。
「……」
授業中であるにもかかわらず、堂々と机に顔を伏せて爆睡する新開君。先生もその様子に気づいているようだけど、あえて気づかないふりをしているみたいだ。
(インターハイの為に今まで以上に厳しい練習をしているもんね)
最近、自転車部の人は生徒会室に来ると、すぐにソファで寝てしまう。その寝顔を見ながら仕事をこなすのが私の日課となっている。
(何か、力になってあげたいんだけどな)
授業が終わってから、新開君の席の方へ行く。
「新開君」
「……」
「新開君、授業終わったよ」
そっと新開君の背中に手を置くと、新開君はモゾモゾとその場で動いてから顔を上げる。眠たいのか、いつも以上にタレ目になっている。
「……あ、あぁ……宮坂さんか、ありがと……」
新開君は大きくのびをしてから、黒板の方に目をやる。
「こ、こんなに授業進んだのか……? 困った、ノート何も書いてないな」
「まあ、あの先生の授業はノート提出ないから大丈夫でしょ。でも、テスト勉強するには困ると思うから……はい」
私は授業中、二重にノートをとることにしたのだ。私が頑張る彼らにできる手助けなんてこれくらいだから。
新開君は目を大きく開き、板書が写してあるルーズリーフを受け取った。
「ありがとう宮坂さん! すごく助かるよ」
「なら良かった。でも、学生の本分は勉強なんだから。起きる努力はしなよ?」
「あぁ! ……本当にありがとう」
新開君は私の目をじっと見る。なんだか視線がそらせなくて固まっていると、クラスの男子が「何お前ら見つめ合ってんのー? デキちゃってんのー?」などと小学生まがいのからかいをしてくる。
「あのねぇ……変な冗談言うと、さすがの私も怒るんだからね?」
「そうだぜ? まだ、付き合ってないよ」
新開君の一言にクラス内が静まり返る。
「『まだ』ってどう意味だよー! なになに、お熱いねー!!」
助けるを求めるように新開君を見ても、彼は満足気に微笑むだけ!!
「ちょっ……もう知らないッ」
クラスに居づらくなり、私は教室を飛び出したのだった……。