第10章 我らの黄金週間
五人になってからはもう、なんというか……凄まじかった。現役運動部の高校生男子四人にはついていくので精一杯で……。
「……ごめん、私はもう休憩……」
私ははしゃいでる皆を横目に浮輪に乗って流されていく。
(あー……気持ち良い)
浮輪の上で仰向きになりながら流れていく……すごい気持ち良い。こうしていると何もかもどうでも良くなってくる。学校に残してきた仕事やお見合いのこと、全部。
「あれ、おねーさん1人?」
突如何者かに浮輪を掴まれ、驚きで体がこわばる。
以前、夏祭りの時に東堂に言われた言葉を思い出す。
『奴等は下心でしか宮坂さんを見ていないのだからな!』
(丁寧な対応をしては駄目だ、無視が1番……)
私はあえて男を無視するけど、なかなか離れてくれない。
(逃げるしかない……)
けど、すっぽり浮輪にはまってしまっていて逃げられない!
「おい女ァ、さっきから無視してんなよ」
しかも、癇に障ってしまったらしい。男は私の首を掴む。強い力じゃないから息はできるけど苦しい……!
「ハッ……や、めてっ……」
すると、男はなぜだかニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
「その顔、すげぇソソるんだけど?」
私は浮輪ごと男に引っ張られ、プールの外に出される。腕を強く掴まれて逃げられない……!
(叫んで助けを呼ぶ? どうすればいい?! この男の子は私をどうしようとしてるの)
「来いよッ」
「無理、ですッ」
「その手を離せ」