第2章 出会い 〜荒北編〜
私が1年の時のこと。校内でも噂になっていた1人のヤンキー。
(箱学はそれなりに偏差値高いから、ヤンキーなんていないと思ってたんだけどなぁ)
生徒会の目安箱にですら「ヤンキーが怖いんで会長どうにかしてください」と無茶振りがくるくらいには事は深刻だった。
そこで私はそのヤンキーと一度、接触してみようと思ってわざわざ夜の遅い時間帯に学校近くを歩いてみた。
(出没場所がわかんないから、今日会えなかったら学校で話すしかないか。学校だと本音で話し合えなさそうなんだけど)
日は完全に落ちていて、目を凝らさないと先が真っ暗で見えない。
その時、原チャリのライトが私の視界に入った。
「!」
乗り手は……黒髪リーゼント、目付き悪い、歯茎……噂通り、あれが箱学お騒がせヤンキーの荒北靖友だ!
「ちょっと君! 止まってー!」
こっちに向かってくる荒北くんに手を振るけど、向こうは見ないふり。絶対見えてるくせに。
「荒北くんだよねー? 私は箱学生だよ! ちょっとお話ししたいんだけどいいかなー!」
またもや無視。原チャリのスピードを落とす気もなさそうだ。
(人が名前呼んでるってのに、あいつまじなんなの?!)
最終手段。失敗したら私もおしまいだけど、
「荒北靖友止まれって言ってんのが聞こえねぇのかこのヤンキー野郎がぁぁぁ!!」
と大声で叫んで彼の道の前に立つと、さすがの荒北も急ブレーキをかけ、
「てめぇの方こそ危ねぇことしてんじゃねえよボケナスが!! 俺を犯罪者にしてぇのか! ぶん殴んぞ?!」
と言い返してきた。とにかく、これで彼の原チャリは止められたし、いい感じに挑発もできた!
「荒北くん、私は生徒会長の宮坂葵! 君に会いに来たよ!」
ここはさっきまでの怒りを忘れて満面の笑顔で。
「は、何言ってんのお前」
「ここじゃなんだから、近くのファミレス入ろうか?」
今思えばすごい誘い方だと思う。