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箱根学園生徒会長でございます【弱虫ペダル】

第10章 我らの黄金週間


巻島家と父と別れ、私は東堂庵を後にする。

(どうしよ、これ)

東堂のお母さんが私にプールの利用チケットを2枚くれたのだ。日本でも有数の大型プール施設で、まる1日楽しめるような場所だ。

(幸いそこは遠くないし、2回遊びに行けばいいか)

気がつけば周りも既に暗くなっている。

「早く帰らないと……」

その時、私の携帯が鳴る。

(東堂からだ)

「もしもし?」
『も、もしもし……宮坂さん』
「どうしたの、突然連絡してきて」
『い、いや……それより、今外にいるのか?』
「ん、そうだよ。今から家に帰るところ!」
『何ッ?! 少し待ってろ、今からそちらに行く! 宮坂さんは今どこにいるんだ?!』

東堂の必死な声に、思わず「東堂庵の前にいる」と返事をしてしまった。すると、一方的に電話が切られてしまう。

(東堂、今からここに来るの?!)





しばらくすると、ジャージ姿の東堂が。愛用の自転車にまたがり、私の方へとやってきた。

「こんな時間に1人で帰ろうとするとは!まったく」
「そっちこそこんな時間に何で迎えになんか……!」

東堂は私の頭の上に優しく手を置く。

「心配だからに決まっているだろう?」
「あー……はい、そうですか……」

私も自転車にまたがり、東堂から目をそらす。

「お見合い、だったのだろう? ……相手の巻島裕介は俺の大切な友人だ」
「巻島さん本人から聞いたよ。東堂は良いライバルだってね!」
「何っ?! それは本当か?!」

突然東堂の声が上ずる。本当に巻島さんのことが好きなんだろうな、東堂。

「けど、それよりも俺は……宮坂さんが本当に巻ちゃんと結婚してしまうのか……許嫁のようになってしまうのかが気になる」
「え……」
「どうしてだかわからないのだが、とにかく嫌なんだ」

信号待ちで自転車を止めた時、私は東堂に視線をやる。東堂も私に視線を送ってくる。


「嫌、なんだ」
「巻島さんは良い人だけど、まだ……やっぱり結婚とかわからない……。それに、父が許してくれるかわからないけど、もしかしたら私……好きな人がいるかもしれないんだ」
「……そうか」

東堂は泣き笑いのような表情になり、「その気持ちは大切にせねばならんな!」とだけ言った。


あとは2人とも無言で、家の近くで別れた。




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