第10章 我らの黄金週間
お見合い前日
Toudou side
寮にて寝る支度を整えていると、携帯がブルブルと震える。
(こんな時間に着信とは)
携帯に目をやると、そこには俺の大事なライバルの名前が!
「もしもーし? 巻ちゃん?? そちらから連絡をくれるとは嬉しいなぁ!!」
即座に電話に出ると、電話越しからため息が聞こえる。
電話の相手は巻島裕介、『巻ちゃん』だ。千葉県に住んでいて、自転車競技部に所属している。俺と同じクライマーで互いにしのぎを削り合ってきた。
『明日だけは絶対に電話してくんな。……言いたかったのはこれだけッショ』
「む? 何故頑なに拒むのだ! 明日何かあるのか?」
『……お見合いがあるッショ』
「お見合い?!」
思わず声が裏返ってしまう。
『だから邪魔すんなって忠告した。頼むから明日だけは本当に電話かけてくんなッショ……』
「わ、わかった……」
『明日の相手、箱学の生徒らしいんだよ。東堂、もしかしたらお前の知り合いかもな』
「そうなのか! 女子のことならなんでも聞いてくれ! おそらく名前を聞けば顔がわかるぞ! 言ってみてくれ巻ちゃん」
『宮坂葵』
その名前を聞いた瞬間、時が止まったように錯覚した。
『んで? どうだ?知り合いか?』
巻ちゃんの問いにも答えられなくて、唇がわなわなと震える。
(宮坂さんが巻ちゃんとお見合い……? 何も聞いていないぞ、何故……)
『東堂?』
「あ、ああ! すまないな巻ちゃん、彼女は俺の知り合いだ!」
『ファンクラブの会員か? だとしたらこっちもやりづらいッショ』
「いや、ファンクラブではないよ。立派な箱根学園の生徒会長だ」
『そうか! なら安心して会えるな。ありがとよ、おやすみ』
「ああ! おやすみ!」
電話を切ってから、俺はぼーっと天井を見上げる。
(宮坂さんが……巻ちゃんと……)
巻ちゃんのことは認めている。あいつは素晴らしい男だ。宮坂さんの相手に不足はないと思っている。けど、俺の中の何かが2人の関係を拒絶するんだ。
「何故……」