第9章 会長の恋模様
次の日、学校に着いたら数名の女子が私を迎えてくれた。
「おはよう!」
私が挨拶をしても、返してくれなかった。
(ん、どうかしたのかな)
厳しい表情をしている女子生徒たち。もしかしたら何か悩みでもあるのかもしれない。
「悩みでもある? 言ってくれれば力になるよ!」
「そう、悩みがあるの」
1人の女子生徒はそう言い、私の手を取った。
「私たち、会長が自転車部の人と仲良くするのが不公平だって思ってる」
(不公平……?)
すると、次々に他の子も頷く。
「私たちは東堂君や新開君のファンクラブの一員なんだ。みんな真剣に彼らのことが好きなの。だから、会長みたいに半端な人が彼らのそばにいるのが嫌なの!!」
ああ、昨日言われたことと同じだ。
(私はみんなと仲良くしてたいだけ)
不思議とカバンを持つ手の力が強くなる。
(でも、彼女たちが自転車部の人を慕っている気持ちもわかる)
「私は……「おお宮坂さんではないか!」」
タイミングの悪いことに朝練を終えた東堂の姿が。
「と、東堂君?!」
「おはよう、みんな」
東堂が笑みを浮かべると、先程とは打って変わったように女の子たちの顔がほころぶ。
(これが、『好き』ってことなのか)
「ごめん、さっきの話の続きだけど「やっぱなんでもない! またね、会長!」あっ……」
私が彼女たちの言葉に返答しようとしたら、彼女たちは逃げるようにその場を去ってしまった。
「なんの話をしてたんだ?」
東堂は少し眉をひそめ、首をかしげる。
「……女の子同士の話だよ、秘密!」
なんとなく東堂に言いたくなくて、私は口元で人差し指を立てて笑った。
「なっ……」
東堂はなぜだか顔を赤らめ、私の両肩をつかむ。
「今のを他の奴の前でやってはダメだぞ!!」
「えっ! なんで」
「理由は聞くな!」
「暴論だぁー」
「なんとでも言え! ほら、始業のチャイムが鳴ってしまうぞ」
なにやら不穏な空気のまま時は過ぎ、私はお見合いの日を迎える……。