第9章 会長の恋模様
Arakita side
部活が終わってから、俺は忘れ物に気づいて校舎の方に戻る。
(くっそめんどくせぇなァ)
人から借りたノートだから置いてくわけにもいかねぇ。仕方なく校舎に戻ったんだが、3年棟の廊下に数人の女子がたむろしている。
「……から、会長を……」
「脅せば……」
「無理だって……」
遠くからでも話の内容がよろしくないものだとわかる。
(つか、今、『会長』っつったよなァ?)
「邪魔なんだけどォ」
わざとひそひそ話をしている女子の間を通る。
「自転車部の荒北君……!」
「ごめんなさい……」
(あー、むなくそわりぃ)
前にも宮坂チャンに忠告はしたけど、もう止められそうにもねぇな。
(そーいや、他の奴らは宮坂チャンのことどう思ってるんだ)
俺にとってあいつは恩人で、まあ……ダチ? のつもりだし、それなりに腹を割って話せる仲だとは思っている。
けど、東堂や新開は違うだろ。
「おめーらは宮坂チャンのことどう思ってるワケ?」
寮に戻り、東堂と新開に問い詰めてみる。
「大切な人だな! 気もきくし、そばにいて楽だと思える存在だ! 俺はあいつを好いているよ」
「素敵な人だと思ってるぜ? 優しくて、強い女の子だと思ってる。俺も宮坂さんのことは1番気に入ってるかな」
(核心に触れてねぇけど、やっぱりコイツら……!)
ったく、なんで俺がこいつらのことで悩まなきゃいけねーんだ……。