第9章 会長の恋模様
その日、私と天宮さんは夕飯を一緒に食べることになった。
互いに生徒会の仕事や部活が終わってから、学校近くのファミレスに入った。
「で? 会長は恋愛したことなかったんだっけ?」
天宮さんはメロンソーダを片手ににっこりと微笑む。なんか、オーラあるんだけど……。
「まあ、うん。精神的にそういう余裕なかったし」
「会長の立ち位置は一般生徒の女子からしたら、すごく美味しい立ち位置だよね! 自転車部の人と仲が良い上にみんなから頼りにされる生徒会長……憧れる」
(私からしたら天宮さんみたいに可愛い人に憧れるわ)
でも、事実そうかも。以前荒北に忠告を受けたけど、東堂や新開君なんかはファンクラブがあるくらい人気だし、真波君もこれから人気が出そうな感じ。
「私はただ、みんなと仲良くしてたいし、今の関係を崩したくはない」
これ以外に望みなんてない。
「それに私、お見合いするんだ。だから、箱学の人を好きになっても意味ないんだなー、これが」
「……そんな曖昧な態度、許されないと思う」
天宮さんの声色が変わる。
「え……」
「……ごめん、でも、事実だよ」
「許されないって……?」
「会長はかなり女子から恨み……っていうか嫉妬されてると思う。うちの学校のイジメって結構陰湿だからさ……私も1年の時にイジメられて荒れてたし。そんな私も会長は優しくしてくれたから、私にとって会長は恩人でなの。だから、その、気をつけて」
天宮さんの切実な物言いに私は何も言えなくなる。
「何かあったら言ってくれれば良いし、力になるから」
この時、私は天宮さんの言葉の意味を理解することができなかった。