第7章 東堂庵の奇跡
「はい、もう仕送りは振り込まれてたんで大丈夫です! 本当にお世話になりました!!」
あれからしばらく東堂庵で働き、ようやく月も変わって仕送りも届いた。これで家に帰ることができる。
「葵ちゃんはよく働いてくれたから助かったわ。……これ、良かったら」
東堂のお母さんが私に何やら包みを渡してきた。
「え、そんな、悪いですよ」
「ここで開けてみて?」
東堂のお母さんの優しい眼差しに、私はそっと包みを開いた。
「え……」
それは、私が東堂の部屋で見つけた写真。
おかしい。私は東堂の家族に「昔、ここに泊まったことがあるんです」なんて言わなかったから、覚えているはずもないのに。
「尽八から聞いたわよ。葵ちゃん、昔ここに泊まりに来てたって。思い出したわ」
すると、東堂のお母さんにギュッと抱きしめられた。
「……辛かったわね。よく、頑張ったわね」
お母さんのぬくもり……いつぶりだろう。
私はそっと目を閉じ、東堂のお母さんの背中に手を回した。
「この度は本当にお世話になりました……! ありがとうございました……! 私、頑張りますから」
そう言って離れる。
「また困ったことがあったらおいで!」
「はい!」
これは奇跡。東堂庵で起こった奇跡。
(いや、必然だったのかな? よくわからないや)
でも、このことをきっかけに私はまた1歩前に進める……そんな気がした。