第7章 東堂庵の奇跡
そこから父との2人暮らしが始まったけど、うまくいかなかった。
「何でお前は俺の言うことを聞けないんだ!」
いつもなら言葉で怒られるだけなのに、頬をぶたれた。
小さかった私は頬を押さえ、目に涙を浮かべて憎しみに満ちた目で父を睨んだ。
父は優しい人だった。でも、あの事件からストレス障害が起こり、怒りっぽい人になってしまったのだ。
「もう、ダメだ……。娘に手をあげるものなど、父なんて言えない……! お前を俺のそばに置くのは無理だッ! 箱根に帰って、おばあちゃんに世話をしてもらいなさい」
父も苦渋の選択だっただろうに。
私は箱根に戻され、祖母と生活を始めた。けれども、高校進学前に祖母は他界。一人暮らしになったのだ。
「葵ちゃんは優しい子だから……。婆ちゃんがいなくてもきっと、うまくやれるよ……」
私は良い子だから。困っている人がいたら助けるよ。悪は許さないよ。
私は生きているんだから。やれることは何でもやるよ。誰よりも忙しく、充実した人生にするよ。
『誰もやらないなら、生徒会長……やります』