第7章 東堂庵の奇跡
東堂side
「荒北俺は何てことをしてしまったんだ!!」
「ッセ! 人の部屋に勝手に入り込んでるんじゃねぇ!」
今はどんなに荒北に冷たくあしらわれてもいい。むしろ罵倒してもらわないと俺の気持ちが済まん……!
「さあ、罵倒してくれ荒北!! 思いっきり!」
荒北の肩を掴むと、その手を叩かれる。
「何言っちゃってんの?! おめぇ、ついに頭おかしくしたか?! いや、元々か!」
「まーまー、落ち着けって靖友。尽八もだ」
なぜだか当たり前のように荒北の部屋にいる新開。新開は俺の隣に座り込み、エナジーバーを貪る。
「んで? 何があったんだ」
自ら口にするのも恥ずかしいことだが、聞いてもらうしかないだろう。
「俺の言葉で、宮坂さんを泣かせてしまったのだ」
すると、荒北は拳を床に叩きつけた!
「テメー何あいつ泣かしてんだヨ?! 何言った?!」
「落ち着け靖友! ……にしても、宮坂さんを泣かすなんてよっぽどのことだな」
新開の飽きれた顔に言葉もない。
「宮坂さんは今、財布を盗まれて生活費がないため、庵の方で住み込みのアルバイトをしているのだが、宮坂さんと彼女の父親が連絡を取り合っているところをみたのだ。だから、父親に生活費のことを相談してみたらどうだと話を持ちかけたら……泣かれてしまった」
「……それは謎だな」
(だが、俺の言葉で泣かせたのも事実。……もしかすると、父親との関係が良くなかったのかもしれんな)
馬鹿だ、俺は。実の父を相手に敬語で話すなど、普通ではないというのに。
「尽八、宮坂さんと同じクラスの俺よりも彼女と仲が良いんだな」
「なっ……」
「認めたかねーけどよ、おめーがあいつと仲良いのも事実だろうが」
周りにはそう見えていたのか。
「聞きたいことがあるなら、直接聞けばいいんじゃナァイ?」
荒北の言う通りではないか。少なくとも、そこらへんの男子よりかは彼女と仲は良いはず。
そう思った時、俺の携帯が鳴った。
『東堂……私と東堂は、昔、会ったことがあるの?』