第6章 2度目の文化祭
文化祭は大成功に終わった。心配していた飲み物の売れ残りについても、前年度に比べてはるかに売れ残りは減った。
夜遅くまで片付けをしていたせいか、学校を出るともう外は真っ暗だ。
(そうだ、今日の帰りにスーパーで一気に買い物するんだった。今日は◯◯スーパーが安かったっけ)
そんなことを考えながら自転車に乗っていると、すぐ近くでバイクのエンジン音がした。
「!」
気がつけばバイクは私のすぐ隣を走っており、私の自転車カゴに入っているカバンに手を伸ばしていた!
(こんな時間にひったくりってあるの?!)
とっさに私も自分のカバンに手を伸ばしたが、乱暴にカバンを奪い取られてしまった。
それに加え、私の自転車も大きく揺れる。
(やばっ)
道路の上に投げられ、さらに目の前には他の自転車が。
急ブレーキをかけてくれたものの、よりによって顔を轢かれてしまった。たいした傷ではないのだけど、頬を思いっきりアスファルトで引きずり、ヒリヒリする。
「あぶねぇなこの野郎」
しかもぶつかってきたのはタチの悪いおじさんだった。その一言だけ吐き、私の元から去っていく。
(うわぁ、すごい惨めだ)
私は急いで起き上がって道の端に寄り、倒れた自転車を起き上がらせた。
(あ、カバンないんだっけ……。確か、あの中に食費が全部入ってたはずなのに)
仕送りは来月。今はまだ中旬。
(断食?!)
お先真っ暗じゃん。せっかく文化祭が成功して良い感じだったのに。今更ひったくり犯捕まえられないだろうし。面倒事は避けたいし……。
「あなた! さっき倒れてた子よね? 大丈夫?!」
声をかけてくれたのは切れ長の一重まぶたの女性。私たちから見たらお母さん世代の人だ。
「あ、はい……」
「怪我はない? 何があったの?」
「ちょっと、カバンを盗られまして……中には今月の食費が」
私の言葉に女性は眉をひそめる。
「あ、すみません。大丈夫ですから……」
「もし困っているのなら、短期間でもうちに泊まり込みでアルバイトに来ない?」
「え……?」
「東堂庵っていう温泉旅館なんだけど……」