第6章 2度目の文化祭
2人で店番をしている間、人はまばらにしか来なかった。
「ただいまー! 玉こんにゃく買ってきたよー!」
天宮さんの謎のチョイス。でもまあ、ありがたくいただく。
「おめさんたちも何処か行ってきたらどうだ? なかなか面白い店がいっぱいあったぞ?」
新開君の言葉に私は東堂君に視線をやる。
「どうする、東堂君」
「行こう! 宮坂さん! 新開、天宮さん、店番頼んだ!」
私は2人に頭を下げ、東堂君と文化祭を回ることにした。
「東堂君はどこ行きたい?」
パンフレットを広げながら尋ねても、東堂君は「宮坂さんの行きたいところで良いぞ!」としか返事をしてくれない。
(私、東堂君に嫌われてんのかなー……)
荒北あたりと一緒に回ったほうが気が楽だったのかもしれない。あいつならパシリにできるし!
「荒北と回ったほうが良かったのか」
東堂君の冷たい声が聞こえる。ああ、声に出して言ってたのか私は。
「いや、東堂君はいつも私に優しいから……申し訳ないんだよ」
「宮坂さんが生徒会の仕事を必要以上に頑張っているのと同じことだ。俺が好きでやっているわけだから、宮坂さんが負い目を感じる必要などない」
「それもそうか!」
なんだか吹っ切れた気がした! よし、これからは東堂君も荒北と同じように振り回そうじゃないか!
「東堂君! お化け屋敷行きたい!」
「なにっ?!」
「よし行こう! レッツゴー!!」
「宮坂さん! いいい、今頬にヌルッとしたものが!」
「はっはー、それはただのこんにゃくだろうね」
「宮坂さん早く進んでくれ!! 後ろから何かが追いかけてくるっ」
「正体を明かしてやれ東堂!」
とまあ、終始東堂が叫びっぱなしで終わったけど。
「人は何故わざわざ恐怖を自ら率先して体験するのだ……信じられん」
「ごめんってば! 次は東堂の行きたいところに行こ?」
私の言葉に先ほどまで凹んでいた東堂の顔が明るくなる。
「ああ! 実は気になる店があってだな!」
そんなこんなで私と東堂は文化祭を満喫したのだった。
これがきっかけで少し、距離が縮まった気がする。